相続放棄をする理由
1 相続放棄をする理由はなんでもいい
法律上、相続放棄をする理由・動機には制限がありません。
相続放棄の相談を受けていると、本当に様々な理由で放棄をされる方がいますが、大きく分けると次の4つの理由に分類できます。
① 縁を切りたい、関わりたくない
② 多額の借金がある
③ 孤独死をして、部屋の清掃が必要
④ 特定の相続人に遺産を集中させる
以下で、もう少し詳しく説明します。
2 縁を切りたい、関わりたくない
相続放棄をする理由として一番多いのが「亡くなった人と関わりたくない」です。
「親が子供のころに離婚して、父親とは30年も会っていなかったところ、警察からいきなり連絡が来た。」
「市役所から『あなたが相続人になったので』と全く知らない名前の訃報が届いた。調べてみたところ、会ったことのない叔父だった。」
など、様々なエピソードをうかがいます。
多くの人が、借金が後から出てくると怖い、財産があっても知らない人のお金なので生活に困っていないので要らない、と相続放棄を選択します。
相続放棄をするために、財産や借金を調査する必要はないため、財産があってもなくても関わりたくない、という場合は財産調査をせずに放棄をする方が多いです。
なお、相続放棄は相続人が単独で行えますので、他の相続人に連絡したり、同意を得たりする必要はありません。
3 多額の借金がある
相続放棄をすれば、亡くなった方にどれだけの借金があっても支払を拒否できます。
また、銀行や消費者金融からの借入、クレジットカードの未払いなどいわゆる借金だけでなく、所得税、住民税、固定資産税、国民健康保険料などの税金等を滞納している場合でも支払いを拒否できます。
生活保護を受けていた方の場合は生活保護費の返還を求められることもあったり、病院や施設で亡くなった場合は未払の入院費等を請求されることもあります。
実際には、被相続人の生活状況が荒んでいたためにどこにどのような負債を持っているかわからない、将来いつ誰から借金返済を求められるかわからないということも多いです。
このような場合でも、相続放棄さえしておけば、あとで請求が来ても支払い拒否ができるため、相続放棄が有効です。
4 孤独死をして部屋の清掃が必要
賃貸で孤独死をしてしまった場合、大家から部屋にある家具等の残置物処分を求められたり、壁紙等を張り替えるなど特殊清掃を求められたりすることがあります。
また、片付けが終わって次の人に貸せるまでの家賃や、亡くなる前に滞納していた家賃を請求されることもあります。
残置物の撤去で50万円、特殊清掃で50万円、片付けが終わるまでの3か月分の家賃で24万円、合計で134万円なんてことも珍しくありません。
相続放棄をしてしまえば、これらの支払や対応を拒否できてしまうため、とても楽です。
5 特定の相続人に遺産を集中させる
「父が亡くなったが、残された母の面倒は同居の次男家族が見ていくので、実家などは全て次男が相続する」ということは良くあります。
また、実家の家業を長男が継ぐ場合に、長男が相続するということもあるかもしれません。
このような場合、相続人全員が遺産分割協議書にサインして印鑑登録証明書を法務局や銀行に提出すれば対応できる場合もありますが、印鑑登録証明書の提出期限の関係で、財産を受け取らないのに何度もサインをして書類を提出しなければいけないとなると面倒です。
相続放棄をして、相続放棄申述受理証明書の原本を預けておけば、あとは遺産を継ぐ人が自由に相続手続きをできるのでとても楽です。
また、「離婚して縁を切った父親が死んだが、財産は娘である自分たちに相続されてしまう。もう父親の実家とはかかわりがないので、父親の財産は、父の弟に相続してもらいたい。」という場合、父の弟は相続人ではないため相続することはできません。
財産を渡すと、贈与税などがかかってしまう場合があります。
このようなケースでは、第一順位の相続人である娘が相続放棄をすることで、第二順位の両親や第三順位の兄弟らに相続させることができるようになります。






















