相続放棄をすると土地はどうなるか

文責:所長 弁護士 岡安倫矢

最終更新日:2025年08月25日

1 相続放棄をした場合の被相続人の土地の管理責任

 相続財産に被相続人の土地が含まれている場合に相続放棄をしたとしても、相続人にはその土地を管理する責任があります。

 民法940条1項は、相続放棄をした相続人による財産管理について、「相続の放棄をした者がその放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人…に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」と規定しています。

 すなわち、相続放棄をした相続人は、相続財産に属する財産を「現に占有している場合」でなければ、管理責任を負わずに済むこととなりました。

 また、仮に相続財産を現に占有している場合であっても、「自己の財産におけるのと同一の注意をもって」、すなわち、財産の現状を滅失させ、または損傷する行為をしないという程度の管理責任を負うものとされています。

 ですので、相続放棄をした相続人は、被相続人の土地を現に占有していた場合に限り、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その土地を管理する責任を負うことになります。

2 相続財産清算人選任と換価処分・国庫への引継ぎ

 相続人全員が相続放棄をした場合、被相続人の土地については、最後にその土地を現に占有していた相続人が管理責任を負い続けるか、誰も占有していなければ、誰も管理責任を負わないかのどちらかになります。

 そのままでは、その土地はまったく流動しないことになる上、管理責任を負う相続人がいなければ荒れ放題になる可能性もあります。

 そこで、そのような事態を解消するためには、相続人だった者や利害関係人(被相続人の債権者など)が、家庭裁判所に対して相続財産清算人の選任申立てをすることができます。

 選任された相続財産清算人は、被相続人の土地を換価処分します。

 もし、清算が終わっても土地が処分されなければ、その土地は国庫に引き継がれることになります。

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